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リビングウェル

クレイマー、クレイマー

広告会社に勤めるテッド・クレイマー(D・ホフマン)は仕事第一の男。徹夜明けで帰宅すると、妻(M・ストリープ)が別れを切り出して家を出た。何故だ? 七歳の息子を残して? 仕事に家事に育児にと目の回る日々が始まった。見るも無残なフレンチトーストを作ったり、お迎えの時間に遅れたと息子はむくれる。何事も母親と比べ、時に反抗し、イラつかせる。仕事にも支障が。だが、父と息子の絆は、少しずつだが着実に芽ばえていた。学芸会での晴れ姿に目を細め、ジャングルジムから転落して傷ついた体を抱きかかえ、必死の形相で病院に走った。もはや息子の存在が全てだった。彼は変わった。妻をないがしろにしていた自分にも気づいた。

一年以上が過ぎたある日のこと。妻が現れ、子供を欲しいと言う。裁判も辞さない。悪いことに、仕事で大きなミスをした夫はクビになる。失業中では裁判に勝てるはずもない。無理強いをしてどうにか新しい職に付くが無論収入はダウン。裁判が始まり、互いの落ち度を責め、主張する。妻の寂しさも、夫の献身の姿も理解したが子供は渡せない。双方の弁護人からの容赦のない言葉が全身を突き刺す。身を切る以上に心が傷ついた。これが裁判なのか。二人が望むものとは何だったのか?

 結果、親権は母親側へ。別れの朝、父と息子は最後のフレンチトーストを作った。二人の慣れた手つきが胸にしみる。互いを強く抱きしめ、せきを切ったように泣いた。やがて妻からの電話。上階の部屋には来ずにアパートの下にいるという。いぶかる夫が降りてみると泣き腫らした妻が。そして、彼女が下した決断とは・・・。
 公開当時と、子を持つ身となった今とでは、私自身、この作品に対するいっそうの感慨があります。悲しみの中で失うものと得るもの。その例えようのない重さが、人を成長させるのですね。目を真っ赤にした妻に夫がかけた言葉。この名ラストシーンには心震え、ハラハラと涙しました。

監督:ロバート・ベントン
主演:ダスティン・ホフマン
   メリル・ストリープ
   ジャスティン・ヘンリー
   (子役)


サイコ

 昼下がり。安ホテルの一室。気ぜわしい情事の二人。マリオン(J・リー)は、金に困窮する恋人サムとの結婚が思うように進まない。銀行に預けるようにと渡された会社の大金を持ち逃げし、彼との新しい生活を目指して車を走らせた。やましさに顔がこわばり、不安が背中に重い。途中、不審の眼を向ける警官の黒いサングラスが、心の動揺に拍車をかける。夜になり、激しい豪雨のためにやむを得ず一軒のモーテルで宿を取ることに。他に宿泊者もない。経営者の青年ノーマン・ベイツ(A・パーキンス)は、病弱な母との二人暮らし。離れの家の二階の窓に映る老婆の影。彼はマリオンを夕食に招くことを提案するが母の激しい叱責を受ける。不安を洗い流すようにシャワーを浴びるマリオン。カーテン越しに老婆の影。影は無言で大きなナイフを振り下ろす。冷徹に、何度も何度も。渦を巻いて排水口に流れる鮮血…。

離れの家では、血のりを付けた母とノーマンとが言い争う声。彼は狼狽しながら浴室を洗い流し、死体を車ごと沼に沈める。一方、表沙汰にしたくない事情から会社側は警察ではなく私立探偵を雇ってマリオンの足取りを追っていた。心配するマリオンの妹とサムも加わり三人は彼女を探し求める。やがて、モーテルを突き止めて彼女の宿泊の事実を掴んだ探偵は、ノーマンの母親に事情を聞こうと離れの家を訪れる。すると、再びあの老婆の影が現れ、探偵を襲う。妹とサムは夫婦を装いモーテルに潜入する。そこで知った驚愕の事実とは!…

 これから起こる悪夢を暗示するかのような些細なシーンとセリフ。観客の心をもてあそぶような巧みなカメラワーク。張り詰めた胸の内をかきむしる音楽。それは私たちに「恐怖ゲーム」を仕掛けるように幾重にも積み上げられ、不気味な影を宿させる。高まる恐怖の波に、私たちは翻弄され、遊ばれる。まさにヒッチコックは偉大なる“映画の遊び人”なのです。

1960年アメリカ映画
モノクロ作品
監督:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
主演:アンソニー・パーキンス/ ジャネット・リー


ひまわり (I GIRASOLI)

 ミラノに、アントニオ(M・マストロヤンニ)とジョヴァンナ(S・ローレン)の新婚夫婦がいる。第二次大戦のさなか、慌ただしいキスを残して夫はロシア戦線へと出征してしまう。長い孤独と不安の後、終戦を迎えても夫は帰らない。帰還兵たちに写真を見せるがむなしく首を振るのみ。夫と同じ部隊だった男と出会うも、聞かされたのは絶望的な言葉。

 過酷なシベリアの豪雪と極寒の中、行き倒れる兵士たち。夫も例外ではなかったのだ。妻はそれでも夫の生存を信じ、決意の行動に出る。いまだ自由な往来がままならなかったソ連に単身渡り、夫を捜そうというのである。それは、愛という名の執念だった。髪には白いものが混じり、写真ひとつを手掛りの砂を噛むような “旅”。
 やがて、おぼしき男がいるという家に案内されると、そこには美しい女性と可愛い娘が。瀕死の彼を救い看病したその女性と慎ましくも家庭を持っていた。仕事帰りの汽車から降り立ったのは、まぎれもなくアントニオだった。逃げるように走り去るジョヴァンナの瞳から止めどなく涙が溢れ、声を上げて泣いた。

 国に戻り、思い出の品を壊し運命を呪った。派手な化粧で男と遊んでも気持ちは晴れるはずもない。アントニオも心を閉ざす毎日。妻の理解を得て、イタリアへ一時戻ることに。
 ある嵐の夜、再会する二人。互いの顔に刻まれた時の重みが心を刺す。もう一度やり直そう、と彼が抱きしめる。隣室から乳飲み子の泣き声。子供の名はアントニオ。もはや時は戻せない。最後の別れをする “元夫婦”。そこは、かつて出征する夫を見送ったのと同じあの駅だった。

 今ある家庭を捨てても、と一度は口走ってしまう男。それは許されるはずもない人間の業であり、同時に、哀しいまでに人間的な心の叫びでもあります。マストロヤンニの苦渋の瞳が、千の言葉より深く胸に迫ります。

1970年イタリア映画
監督:ビットリオ・デ・シーカ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
主演:ソフィア・ローレン/ マルチェロ・マストロヤンニ
   


手錠のままの脱獄 (THE DEFIANT ONES)

雨の中を走る囚人護送車。
誤って崖から転落し、二人の囚人が脱走する。白人(T・カーティス)と黒人(S・ポワチエ)。
互いの手首を鎖で繋がれ、いがみ合っている。
川の激流に飲まれ、深い穴に落ち、蛙を焼いて喰らい、煙草を分け合いしての逃避行が続く。

ある町で、深夜に商店に忍び込むが捕まってしまう。
片方が黒人であるがゆえに、町の男たちは二人をリンチにかけようとする。
だが、一人の良識ある男によって救われ、辛くも逃れた。
心臓が止まるほど走り、苦悶する二人。
ストレスも頂点に達し、言い争い、殴りあう。
鎖は食い込み、骨がきしむ。

やがて、人里離れた土地で、夫に捨てられてひとり息子と暮らす女と知り合い、そこでついに鎖を断ち切る。
孤独と閉塞感から抜け出したい女は、自分を連れて逃げることを求め、白人と二人で南へ。

 黒人は北を目指して、鉄橋を渡る列車に飛び乗ることに。男たちは永遠の別れを告げた。
だが、女が近道だと教えた沼越えの道は、死が待つ底なし沼だった。
黒人が捕まり自分たちのことを喋ってしまうのを恐れた哀れな嘘。
激怒して女を振り払い、黒人の後を追う男。
難を逃れ、二人で列車に飛び乗ろうと必死に走る。
まるで鎖に繋がれていた時のように。
先に乗り移った黒人の手を懸命に掴もうとする白人。
一度は掴みかけるも、精根尽きて二人もろとも線路の下まで転げ落ちてしまう。
遠くには追っ手が放った猟犬の鳴き声が。
黒人は、兄のように白人を胸に抱き、煙草に火をつけ、そして高らかに唄い続けるのだった。

人間は弱いです。
体裁やうわべだけに終始した理解などは、いざとなれば何の力にもならないのだと、この作品が教えてくれる気がします。
骨太で重厚、そして男クサイ映画です。

1958年アメリカ映画 (モノクロ作品)
監督:スタンリー・クレイマー
主演:トニー・カーティス シドニー・ポワチエ 


『道』LA STRADA


1954年イタリア映画(モノクロ作品)
監督:フェデリコ・フェリーニ
音楽:ニーノ・ロータ
主演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ

巨匠フェリーニが奏でる人生という名の心の旅路。魂をも満たす美しい主題曲と共に永遠に語り継がれる不朽の名作。

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『狼たちの午後』DOG DAY AFTERNOON

1974年アメリカ映画
監督:シドニー・ルメット
脚本:フランク・ピアソン
主演:アル・パチーノ、 ジョン・カザール


1972年8月22日、ニューヨーク・ブルックリン。
実際の事件をもとに描かれたあまりにもリアルな人間模様。 そこからあぶり出された真実とは・・・

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『真夜中のカーボーイ』MIDNIGHT COWBOY

1969年アメリカ映画
監督:ジョン・シュレシンジャー
主演:ジョン・ボイト、ダスティン・ホフマン
音楽:ジョン・バリー、ニルソン(主題歌)

何かが変貌しようとしていた時代。
大都会の虚構と現実の間でもがく若者たち。
“アンチ・ヒーロー”のバイブルとも言える問題作!

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『陽のあたる場所』A PLACE IN THE SUN

1951年アメリカ映画
監督:ジョージ・スティーヴンス
原作:セオドア・ドライサー
主演:モンゴメリー・クリフト
エリザベス・テイラー
(モノクロ作品)

愛、野心、そして殺意。揺れ動く心が行きついた末路は・・・。
実話を基にした社会派小説「アメリカの悲劇」の映画化。


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