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女子総合格闘家 藤井惠

女子総合格闘家 藤井惠
藤井惠 プロフィール
(1974年4月26日生)
日本の総合格闘家。岡山県井原市出身。AACC所属。愛称は「フジメグ」。
女子総合格闘家屈指のグラップラーで、総合格闘技では無敗を誇る。(2010年10月14日現在)多くの勝ち星を開始1分以内で決めており、「秒殺女王」の異名を持つ。
  • 藤井惠 オフィシャルブログを見る

特集 藤井惠

彼女の一撃が、砕いていくもの。

シアトル、サンフランシスコ、ニューヨーク。 ここ数年、日本人アスリートたちの活躍で有名になった米国の都市がある。けれど2010年の秋、ひとりの日本人女性が米国の南、ジャズの聖地として名高いニューオリンズの地でリングに立ったことを知っているだろうか。
彼女の名は、藤井 惠。女子総合格闘家である。柔道、サンボ、グラップリング、そして総合格闘技分野で、圧倒的な強さで存在感を示している。ショーアップされた格闘芸の世界ではない。真剣勝負の格闘技で彼女は闘い、結果を出し続けている。

ベースボールやフットボールやフィギュアスケート等、スポーツマーケティングが確立されたジャンルに比べると、格闘技はまだまだ一般的な認知度が低い。そんな現状を打ち破るかのように彼女は現れた。彗星の如く、ではない。そういったチープな形容は彼女には似合わない。
来る日も来る日もジムで汗を流し、リングに立ち続けた彼女のひたむきな努力に、世の中がようやく振り向き始めたのだ。
彼女は名乗らなければ、誰も格闘家だとは気づかないだろう。打ち合わせの席に現れた彼女はアスリート特有の野暮ったい服装ではなく、チャーミングな雰囲気を小柄なカラダ全体から発していた。

しかし藤井惠は、どこにでもいるフツウの女の子では、ない。時々、女子のスターアスリートを、どこにでもいるフツウの女性でしたと表現する記述があるが、そういった物言いは、少し失礼な気がする。同じことを、男性のアスリートにもいうだろうか。どこにでもいるフツウの男の子でした、と。
彼女はとても友好的で、こちらの質問というジャブをひとつもかわすことなく、丁寧に誠実にこたえていく。
総合格闘技についての専門的なクエスチョンではなく、たとえばニューオリンズの食事は肌に合っていたか?といった類いの質問にも嫌な顔ひとつしないで。こちらはどうにか彼女の内面の輪郭を、その人間性の本質に少しでも触れようとファミリーレストランで、インタビューというリングでジャブを放ち続ける。

いくつかの決め技は用意していた。たとえばなぜ闘うのか?といった根源的なことについて。人間がずっと抱えてきている暴力性だとか、闘争本能について。もっとも印象に残った試合はどれですかとか、格闘技を始めた動機はなんですかとか、ありきたりな質問ではなく。
暴力や闘争について、哲学者や思想家が何百年も思考を繰り返してきた難問を彼女に提示してみたかった。それがこちらの左ストレートだ。

藤井惠が、ベラトールFC31の準決勝の地、ニューオリンズのリング上で、1R1分39秒、腕十字で見事に一本勝ちを決めた頃、その数日前後の間に、日本ではまた幼児虐待事件が起きた。猛暑だった2010年の夏、いったい何件の陰惨な事件が起きただろう。
西日本のどこかで4歳の男の子が床に叩きつけられ頭蓋骨を割られ硬膜外血腫で死亡する。東日本のある街で、3歳の女の子が腹部を蹴り上げられ内臓破裂で危篤に陥る。北日本の都市部で1歳の幼児が頭部を揺さ振られた挙句、死に至る。東京都内で47歳の男が33歳の内縁の妻を殴打して殺害する。
藤井惠がニューオリンズのリングでオーディエンスの喝采を浴びた頃、日本の至る所で救急車のサイレンが鳴り響いた。その音は絶望に似ている。格闘家の勝利を告げるゴングの音とは対極に位置する。

幼児虐待。ドメスティックバイオレンス。陰惨で気が滅入る事件が起きる度に、貧困との関係性が語られたりするが本当にそうなのだろうか。格差社会との相関が論じられたりするが、すべては時代状況に要因があるのだろうか。弱者に向かって暴力を振るう時、その人間は何を思うのだろう。藤井惠が云った。
……自分をコントロールできない人、自分をプロデュースできない人が増えている気がする…。
……文明が発達したように人間もレベルアップしなければいけないのに五感のレベルが退化したのではないでしょうか……。
藤井惠は、難解なクエスチョンに言葉を選びながら、けれど淀みなくこたえてくれた。
藤井惠は、社会人類学者ではない。思想家でもないし、教師でもないし、哲学者でも、評論家でも、ケースワーカーでもない。
女子総合格闘家である。闘う人である。
自分より強い者に向かって闘いを挑む人である。そんな彼女の答えは極めてシンプルだった。人間は本能的に強くなるために他人と競い合い自らの能力を高めていく。レベルアップにトライする存在である。そんな意味のことを彼女は云った。

きょうも街角で、~きみはそのままでいいよ~といった甘いメッセージのポップソングが流れている。
弱さを弱さとして肯定する空気がこの国に蔓延している気がする。今夜も深夜の駅のホームで乗務員にからむ泥酔した男の怒声が響き渡り、休む間もなくサイレンは鳴り続けて、ニュースは憂慰な事件を伝え続ける。弱い者がさらに弱い者を痛めつける。それはまさしく退化だろう。
きょうも藤井惠は、異国の地の強い者と出会うためにジムで汗を流し続けている。
彼女の一撃は、人間はそもそもそんなに弱い存在ではないことをこれからも証明していくだろう。その一撃は人間の脆弱さを打ち破り続けるだろう。進化の過程をリングの上で実験し続けてくれるだろう。生物学者の想像力も届かないココロのレベルの進化を。
きっと人は彼女の真摯な姿に弱さを克服するヒントをもらっているのではないかと思う。

藤井惠はきょうも闘いに出かける。闘争本能に従いながら。
彼女の一撃はこれからも異国の地で強敵を倒し続けるにちがいない。彼女は闘う人であるから。

けれど彼女は、永遠に暴力とは無縁である。

特集 藤井惠

確かに60秒でたくさんの勝負を決めてきた。
けれど、壊れる時は1秒だってことも知っている。

次の決戦はアメリカのフロリダですが、海外での食事でコンディションを保つのに何か工夫はしていますか。
昔は、日本食を持っていっていたのですが、最近は、油をあまり使っていない食事や野菜を多めにとるようにしています。現地に馴染めるように。

旅行で海外に行っても、食事が合わないと体調が悪くなるものですよね。藤井さんの場合は、試合に向けて、食事も勝負なわけで。ニューオリンズでの準決勝は大丈夫でしたか。
やはり日本食がいちばんおいしいですよね。日本と同じ食べ物でも、海外では味付けや油が違ったりするので、まずいというより、違和感があります。試合前は、サラダやフルーツなど、自然なものを食べるように心がけていますね。

海外に決まって持っていくものはありますか。
ジムで出しているものと、ブイ・クレスは持っていきますね。

ブイ・クレス トラベルですか。
ブイ・クレス トラベルは携帯もしやすくて、便利ですね。お水もいらないので。

ベラトールの準決勝にも?
そうですね。おいしく、かじっていました。

ブイ・クレスとの出会いはいつですか。
3年半前くらいから飲んでいます。おいしくて、飲みやすいですよね。1本の量も多くないので。私は寝る前に飲むのですが、起きた時すっきりしている。すぐに元気になるわけではないですが、続けて飲むとわかりますよね。健康な時より、体調が崩れがちな時に飲むといいですよね。

太りすぎて膝を痛めたんじゃないの?と思ってしまうような、スポーツ選手もいる一方で、格闘家の方はカラダづくりがストイックなイメージがあります。日常の体調管理で気をつけていることはありますか。
揚げ物をひかえたり、100%果汁やお茶や水しか飲まなかったりと、気をつけていた時期もありました。でも、そうすると、体重が落ち過ぎてしまって。肌もカサカサになって。やり過ぎるのもよくないな、と。お肉を食べたら、その分、野菜を食べるとか、バランスよく栄養を摂るようにはしています。

NGフードのようなものはありますか。
NGフードではないですが、摂生をした後に油っぽいものを食べると気持ち悪くなったりはしますね。摂生する時間が長くなればなるほど。お水を甘く感じるような感覚になることもあって。不摂生していると食べ物の味がわかりにくくなるのですが、食生活を正しくしていくと、野菜ひとつにしても甘味を感じたりして、食べ物の大切さを感じます。

“秒殺女王”の異名を持ち、世界のリングで活躍されている藤井さんですが、格闘技をはじめたきっかけはなんですか。
小さい頃から、父に柔道を教えてもらっていて。高校、大学は寮に入り、柔道を続けていました。礼節や、人を敬う心など、柔道から学んだことは今につながっている気がします。

柔道以外にもサンボや、ブラジリアン柔術などでも活躍されてきましたが、様々な舞台にチャレンジする原動力はなんでしょうか。
好奇心が旺盛なのだと思います。柔道をやめて、サンボをはじめた時、サンボの楽しさを味わうことができて。それまでは柔道だけをやっていたのですが、その競技によって学べるものが沢山あるのだな、と。新しい経験が楽しかったので。いろいろな競技を渡り歩いてきたのだと思います。

格闘技をやっていてよかった、と思うのはどんな時ですか。
子どもの頃、柔道であまり力を使っていないのに、自分より大きな子を投げられた時は、「え?」みたいな感覚で、気持ちよかったのを覚えています。相手が自分の罠にはまったというか。その感覚がいいな、と。楽しいな、と。相手の力を吸収して、うまく動けた時にすごくスッとするというか。

技が決まったおもしろさでしょうか。
そうですね。パズルじゃないですけど、フェイントを入れたりする中で、狙っていた作戦にカチッとはまった時は。流れるような技の組立ができるので。

その感覚は総合格闘技でも同じですか。
そうですね。それと、相手の動きがすごく遅く見える時があります。相手が遅くて、自分が早く動ける感覚。相手の足が上がっていくのが、とてもゆっくり見えたり。相手の腕の産毛や、毛穴まで見えたりする時もあります。もっと時間が経っているかと思ったら、たった数秒だったりして。今まで数回しかないのですが。総合格闘技をはじめて、はじめて感じた感覚で。それがおもしろいなと。

総合格闘技だからこその感覚なのですね。
総合は打撃があるので、怖さもあるのですが。自分が自分じゃないような。火事場の馬鹿力じゃないですけど、普段の自分を100%とすると、120%、130%にもなっている、自分が知らない感覚で動ける時がありますね。練習の時には、そういう感覚はまったくないのですが。

試合中は冷静に考えているものですか。
相手がこう来たら、こう攻めようと。動きのイメージは練習やアップの時に済ませておいて、試合では、相手の動きだけに集中して、“無”になるようにしています。

昔の少年漫画のボクサーのように、ただガムシャラに練習するだけではダメなのですね。
同じ人間を殴ったり、蹴ったりしなければならない競技じゃないですか。普通の感覚だと、人を殴ろうとは思わないわけで。相手を倒そうという想いがないと戦えませんが、自分をコントロールできる、客観的に見られる感覚を残していかないと。ワァーッと、こどものケンカみたいになってしまうので。そのあたりの精神的なものとか、バランスづくりがおもしろいですね。

男性優位の世界で女性として戦う時に、男社会に負けられないという意識はありますか。
はじめはなかったのですが、格闘技の世界で戦えば戦うほど感じます。男だから、女だから、という面があって。それに負けたくない気持ちはあります。今、総合格闘技で、男女ふくめて22連勝しているのは私だけなのですね。負けないことが大前提で、いい試合を見せることで、やっとスタートラインに立てた気はします。「女だから」と言って見てきた人たちも、違う目で見てくれるようになってきて。それで、勝ったというわけではないのですが。 自分が納得できるところまで闘って、いい勝負を見せたい。自分が後悔しないために、やり残しがないように続けたいですね。

やはり偏見はあるのでしょうか。
同じようにがんばって、苦しい練習をしていても男性のほうがどんどん表舞台に出ていける状況はあります。せっかく好きでがんばっているのだから、もっと夢や希望を持てる場所を作っていきたい。今の若い女の子たちの居心地のいい場所にしたいという願いはあります。

ここ10年くらい、幼児虐待やDVといった内向きの暴力が増えていて。人間が、人間を傷つける。弱いものに力を向けてしまう。そういった現状について、プロの格闘家として思うことはありますか。
私たちとは逆だな、と。私たちは、強い相手と戦いたい。学校でも、会社でも、家庭でも、虐待とか、いじめとか、自分より弱いものに力が向けられている。とても理不尽で。怖いな、と。自分をコントロールできない人、自分をプロデュースできない人が増えてきているというか。

虐待をはじめとした陰惨なニュースに触れる度に、みんな不安な気持ちになると思うのですね。
恐怖を感じるというか。人間の暴力衝動に。強い者に戦いを挑むというのは爽快だし、美しいと思うのですけど。

基本的に、闘うという本能は人間が生まれた時からあるものですよね。闘いながら、いろんなものを得ているわけで。本能的にだれもが持っているもので。特に、女性が格闘技をやっていると暴力的だからよくない、と見られることが多いですが。本当は、だれもが持っているもので。格闘技をやっていなくても、社会の中で殴りたい何かや、突き破りたい何かがあるはずなのに。
それを抑えようと、きれいに済まそうとしていたりするのもあるのかなと。そのひずみが、違うところで爆発したり、暴力になってしまったり。殴ったりするにしても、そうですけど。想像力がなくなってきているのもあると思います。(幼児とかに)バックドロップをしたら危険なことは、子供でもちょっと考えればわかりますよね。言葉の発言にしても、これを言ったら相手が傷つくなとか。ちょっと考えれば、わかることなのに。
今はこれだけ文明も発達してきているから、人間自体も進化してレベルアップしていかなければならないのに、逆に五感が退化しているというか。ものがあふれすぎて感じる力が低下してきているのかな、と。想像しなくても、ピッてやったら答えが出たりして。

たしかに退化ですよね。ある種のプライド、自尊心があったら、そんなかっこ悪いことはしないわけで。人問がもともと持っている五感を殺してしまっている時代かもしれませんね。藤井さんのように、身体能力や精神力を鍛えて、高いレベルで競い合う格闘技には、時代的なヒントがあるように思います。
やっていることが格闘技なので、暴力的に見られることも多いですが。つきつめていくと、真逆の精神になります。選手の中には、強いけれど勝った相手にベロを出したりとか、中指を立てたりする人もいて。そういうイメージを格闘技に持たれるのはさみしいですね。総合格闘技もスポーツとして、観ていて気持ちよかっ たり、清々しいものにしていきたいです。

マイ ブイ・クレス デイズ 藤井惠

強さとは弱さだと思う。
痛みを感じられる繊細な心があるから、本当の強さが生まれる。

ブイ・クレスを知ったきっかけは、知り合いの紹介でした。それからニュートリーの方にお会いして、いろいろと丁寧に説明を受けたんです。それで自分に必要な栄養素が沢山入っていることを知って、飲んでみたいと思いました。確か、最初はキャロット味だった気がします。イメージよりも飲みやすかったです。おいしかった。実は、飲む前は、なんか薬っぽい味かな?と想像していたのですが、フルーツジュースのようでした。試合前はハードな毎日が続くので、次の日に疲れを残さないように、夜寝る前に飲んでいます。疲れがひどいと感じる時は、朝と夜2回飲んでいます。最近は、試合の予定がない時も、毎朝飲んで体調を整えています。競技パフォーマンスにもいい影響がある気がします。 ふだんの食生活は、とにかく野菜や果物をいっぱい食べるようにしています。脂身は控えていますが、食べた時は次の日に魚にしたり、野菜を多めにしたりしてバランスに気をつけていますね。ブイ・クレスはダイエットしている女の子にも勧めたいですね。食事の不足分のビタミン・鉄・ミネラルを補充して健康的に体重を落としてもらいたいから。今後の予定は、今はまだ試合が決まっていないのですが、いつ試合が決まってもいいように毎日トレーニングしています。夜は格闘技の指導をしています。最近はうれしいことに女性も増えてきましたね。それからアメリカでタイトルマッチをしてベルトを獲りたいです。応援してくれる方達を笑顔にしたい。

(今回の東北大震災で) 被災地には弟や友人がいますし、他の被災された方々の事を想像すると、当初、元気が出ませんでしたが、いまは格闘技仲間と街頭で募金活動をしたり、道場でも募金を募ったり、自分自身もワンコイン募金を実行するようにしています。微々たる力ですが、自分の出来る事をこれからも続けていきたい。そしてまた元気に試合をしたい。全力で闘うことが自分の使命だと思っています。人の想いは人を超える時があるし。想像を超える力に変わる時がある。いまみんなの想いは、すべて被災地の方に向かっているのではないですか。みんな心はひとつで、みんなの力を合わせれば立ち上がる力になると。 (やっぱり私は) 強さとは、弱さだと思うんです。痛みを感じられる繊細な心があってこそ、それを超えた時、本当の強さが生まれるはず。また夢や希望の日々に戻すために、いまこそ心ひとつになればいい。みんな一人じゃないですから。

文/佐藤司郎 SHIRO SATO

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