誰かから誰かへ、手渡されて広がる。

ブイ・クレスの輪ものがたり

大切な人を想う気持ちが手渡されて、広がっていく。
ブイ・クレスの輪を描いたショートストーリー。

メインイメージ

第12回

年の功より、好奇心

 武藤さんがブイ・クレスを知ったのは、入院がきっかけだった。転んで脚を骨折して入院していたときに、美容師の友人が持って来てくれたのがブイ・クレスだった。初めての入院で「体が資本!」と再確認した武藤さん。それ以来毎日飲み続けている。
 武藤さんはお花の先生である。お稽古が終わって、いけた花を眺めながら生徒さんたちとおしゃべりするときが武藤さんの一番好きな時間だ。「先生、これちょっと見てみて」とひとりの生徒さんがタブレットの画面を見せてくれる。家でいけた花の写真だ。「あらー、よくできてるじゃないの」「ここの赤が効いてるわね」と、みんなで盛り上がる。「先生、こんなお花知ってる?」と珍しい枝ものを見せてくれる人もいる。十も二十も、ときにはもっと年下の生徒さんたちが届けてくれる新鮮な空気が武藤さんは大好きだ。今日は、「これ、私の元気のお守りなのよ」と生徒さんたちにブイ・クレスを教えてあげた。「ジュースみたい。飲みやすいのね」「私はこの味が好き」と、またひとしきり盛り上がる。
 最近、武藤さんは、生徒さんや孫たちに少しずつ教わって、季節ごとの花の写真にひと言添えるブログを始めた。この歳でパソコンなんて思ってもみなかったが、彼女の好奇心と人脈が後押ししたのだ。「持つべきものは若い友ね。それから孫もね」と、武藤さんは思う。「そうそう、孫の奏太にもブイ・クレス送ってやろう、受験勉強も頑張ってるみたいだしね」。

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